トリミングサロンの事務、まずは大きな分類を把握しておくことが大切
事務経理のお仕事、何をどこまでするか?
まずは分類することから始まります。
分類して初めて、自分がすること・税理士さんにお願いすることが明確になります。トリミングと同じです。シャンプーとブローとカット、頭の中で整理できてるからスタッフにも頼めます。
私の場合は事務を大きく3つに分類しています。
【日次事務】
①店舗での売上の集計(売上表の作成)
②経費の支払いと整理(経費台帳の作成)
【月次事務】
①売上と経費の月間データの集計
②仕訳入力(月次決算)
【年度事務】
①決算整理仕訳(年度決算)
②税務申告書の作成
私は節約のため全部自分でやっていますが、せめて、日次事務①②と月次事務の①データ集計までは自分たちでやった方がいいと思います。自分でやるメリットが大きいからです。
他は税理士の先生に丸投げでもよいと思います。
お店での実際の事務作業(日次事務)
毎日する仕事を具体的にみていきましょう。
以下はあくまで私の場合です。POSレジやレジアプリはありません。原始的に紙に手書きでやっています。
【日次事務】
①店舗での売上の集計(売上表の作成)
②経費の支払いと整理(経費台帳の作成)
【売上】
①はお店で毎日行う売上の管理です。
売上をお客様ごとに売上表(票)に記入して、一日の売上を集計します。できればトリマー別の売上金額や新規顧客と既存顧客の区分もあった方がベターでしょう。
ここでポイントがあります。売上は必ずお金の管理(出納帳)とセットで行うことです。
毎日、お店を締めたら現金を数えることです。
次の式から「夜にあるべき現金残高」を求め、「実際にあるレジの現金残高」と比べます。差があれば原因を調査します。
前日の現金残高 + 当日の売上合計 - クレジット払い = 当日夜にあるべき現金残高
これを毎日しておかないと、差が累積的にたまって訳が分からなくなります。
当然、税務署からズサンな経理という烙印を押されます。
従業員にお店を任せているなら絶対必要です。お金の管理をきっちりして大切な社員の中から犯罪者を生まないというのは、経営者の責任です。
【経費】
②次に経費です。経費を支払ったら、忘れないうちに経費台帳(エクセル)に必要事項をメモしておきます。
「電子帳簿保存法」も始まっていますので?請求書や領収書などの証憑もルールに従い保存しておきましょう。
こまめにやることです。これが月次事務で効果を発揮します。
ここでポイントがあります。領収書の裏などに、ちゃんとストーリーを書いておくことです。
誰が見ても当然経費というような明らかな出費ならストーリーは不要です。例えば犬用シャンプーです。しかし、微妙なものは「どのようにトリミングに必要なのか」メモしておくべきです。
一番ヤバいのが一年分まとめて領収書の整理をすることです。ストーリーを思い出すことができないし、そもそも月次決算ができません。
裏方バックオフィースの仕事(月次事務)
次に月次の裏方の事務です。
【月次事務】
①売上と経費の月間データの集計
②仕訳入力(月次決算)
まず、①お店から売上表を集めてエクセルに入力します。経費は日次事務でエクセルに入力済みです。これで売上と経費のデータがエクセル上にそろいました。集計して月次の損益を計算します。
当月売上 - 当月経費 = 損益
会計システムに仕訳を入力しなくても、月次の損益計算は自分で出来るのです。
②仕訳入力は税理士さんに頼んでも問題ないです。
【月次事務をするメリット】
自分で月次事務をすると、貴重なデータがタイムリーに得られます。例えば私はこんなデータを得ています。
●店別・トリマー別の月間売上高・売上単価・トリミング犬数(1日平均売上・犬数など)
●新規犬数、新規率、リピート率
私の場合は創業当初からデータがあるので、前年比較などで傾向もつかめます。
高価なシステムを買えば自動で計算してくれると思いますが、私はエクセルで計算させています。
計算の元データが入手できるように、あらかじめ売上表のフォーマットを工夫しています。
将来、お客様が増えるか減るかチェックしていますか?★★★★★
【トリミングサロンの特徴】
現状維持で数年後にお客様が増えるか減るか分かりますか?
私はある程度ですが分かります。それは新規率とリピート率のデータを把握しているからです。
犬の寿命は10年~20年ぐらいです。どんなにリピート率が高くても、10年経つとお客様はほとんど入れ替わります。
極端な話、現在どんなにお客様が多くて高いリピート率があっても、新規のお客様がゼロなら10年後のお客様はゼロに近づきます。
これはトリミングサロンの特徴です。
お客様の数とリピート率は、多くの経営者が気にしているでしょう(短期的に重要です)。
しかし、新規率も同じぐらい意識してチェックする必要があります(長期的に重要です)。
【新規率の把握】
私の場合は次のように新規率を計算します。
新規率 = 月間の新規客数 ÷ 月間の来店客数
非常に単純で簡単です。
それでは質問です!
5年後にお客数を維持するためには、新規率が何パーセントあればいいか言えますか?
1%では不安です。10%なら安泰かもしれません。私も正確に何%でOKとは言えません。
なぜなら、店によって特徴が異なるからです。
●開店したばかりなら新規のお客様ばかりです。新規率は100%ですが、大丈夫とは言えません。
●繁盛店では新規を停止している店もあります。新規率は0%ですが、常に待ち状態でダメではありません。
●既存のお客様のリピート率(定着率)が低い店は、より多くの新規顧客が必要です。
一律に新規率が何%必要とは断定できないのです。
【お勧めの方法】
そこで私のお勧めは新規率の傾向を見るということです。これで充分に役目を果たします。
トリミングサロンの場合、お客様が急に減ることは少ないと思います。通常は減るにしても、徐々にゆでガエルのようになっていきます。気が付けば遅かったという感じだと思います。
新規率が数か月にわたり減る傾向にあれば、数年後は危ないということです。
新規率が前年同期比でみて減る傾向にあれば、数年後は危ないということです。
傾向だけでも見ていきたいです。
【ちなみに】
ちょっとだけ、試しに頭の体操をしてみましょう!
●ワンちゃんがトリミングできる期間が10年だと仮定しましょう。この場合、1年後には既存のお客様が10%ほど減ります。
ここまでいいですか?
●ということは、お客様の数を維持するには1年間で10%の新規顧客が必要です。月間に換算すると1%弱の新規顧客が欲しいということになります。
これが最低ラインです。
●しかし、新規の全員がリピートしてくれる訳ではありません。新規のうち半分しか残らないのであれば、倍の2%が最低ラインとなります。
あと少しです。
●離れていくのは新規顧客だけでありません。既存のお客様も他店に逃げたり、引っ越したりします。これが月間1%(100人に1人)だったらその分上乗せして3%は欲しいとなります。
だから私は最初に言ったのです。
●1%では不安です。10%なら安泰かもしれません。
経理仕訳の効率化★
最近は便利なソフトがいっぱいあります。
銀行データやエクセルデータを自動で仕訳にしてくれるそうです。
私の場合、すべて手で仕訳です。
まず、機械の仕訳を信用していません。それから、いろいろ自分でアレンジしたいのです。
しかし、手でやっても遅くはありません。効率化の工夫をすれば仕訳作業は1/10の時間で済む可能性もあります。
【例えば】
●売上を1日ごとに仕訳すると月30本の仕訳作業が必要ですが、1ケ月まとめて仕訳すると1本です。
●経費も取引ごとに仕訳すると月100本の仕訳が必要でも、1ケ月まとめると仕訳は1本です。
1ケ月分を集計して仕訳をすることで、時間が大幅に節約できます。私の場合、月次の事務(データ集計と仕訳)にかけるのは2時間弱だと思います。5店舗でも2時間あれば十分です。
これを可能にするのが、「エクセルのピボット集計」と「経営者の立替金精算制度」です。これはまた時間がある時に説明します。